ちょっとそこまで映画を観に行って

映画を観た感想・レビューを書きます。日常から少し離れて、でも気軽に観に行ける映画はいいもんです。

『ホームレス ニューヨークと寝た男』(2014)

 

マーク・レイという男が屋上暮らしを続ける理由がよく分からなかった。

 

上品そうな靴やスーツを着てバリバリ仕事をこなしているようにみせているが、コードやらがむきだしの寝そべるのがやっとのスペースに寝袋で眠る。不法侵入者として捕まらないか、怯えながら階段を上り下りする毎日。

 

そんなんだったら故郷に戻ってのどかな場所で母親と暮らしたり、彼が語った「ここで結婚(?)して乗馬でもして暮らせたら幸せだろうに」っていうその“幸せ”を目指せばいいのに、って思う。

 

 

しかし、それはできない。

マークがこのニューヨークの華やかな表舞台、輝かしい場所に身を置きたいというかぎり、屋上暮らしは続くのだろう。

スーツとユーモアにあふれた話術で武装して闘いつづけるしかない。どこが生活拠点だろうと、この街にとっては関係のない話だ。

 

 

持ち家や賃貸だって、仕事にあぶれる不況のなかでは払いつづけて住んでいられる保証なんてどこにもない。アメリカも日本も、明日に不安を抱いて生きる人は本当に大勢いる。

 

 

風まかせで根無し草でさすらう52歳のマークの生活は、屋上で声をかけてきた青年のように羨ましいものにみえるかもしれない。

孤独と葛藤と体力の限界。

彼が実際に抱えているものはそれらだ。アメリカンドリームはやはり存在しない。

 

 

ただ、そんな彼の境遇でも救われた気持ちになったものが2つある。

 

ひとつは彼の友人の言葉だ。

マークの誕生日に来ていた友人が、昔仕事がなかったときにマークが2人分の仕事をとってきた、そういう奴なんだとカメラの前で語った。苦楽を共にした友人との絆はマークを支えている大きなものなのだろう。

 

そしてもうひとつは屋上から見えるニューヨークの風景だ。

夜景も朝焼けも、街と空を見渡せる。たくさんの不安な人間がいるにもかかわらず、美しい静止画のようにニューヨークの街並みが広がっている。マークをこの場所に踏みとどまらせているひとつにちがいない。

 

 

 

ホームレス ニューヨークと寝た男

Homme Less/2014/墺、米/83分/ミモザフィルムズ/監督:トーマス・ヴィルテンゾーン/出演:マーク・レイ/音楽:カイル・イーストウッド、マット・マクガイア

http://homme-less.jp/